夢の中へ行ってみたいと思いませんか?
昨夜の出来事。
いつものように居間で、つまらないTVを観ている風にダラダラ点け流し、いつものようにビールをかっこんで脳ミソをとろかす作業に勤しんでいると、
なにやらオカンが寝ている寝室でごそごそと音がする。
ふと、目やると、
オカンのベット上の掛布団がもぞもぞと隆起している。
「あ、いつものやつかな。」
とろけ始めた脳が答えらしきものをすかさず用意し始めている。
オカンはパーキンソン病で、ある種の睡眠障害を起こすこともある。
いわゆる『レム睡眠行動障害』だ。
パーキンソン病を発症してからというもの、突然大声で「ごら゛っ!!」とか「あ゛あ゛あ゛っ!!」など言葉にすらなっていない音を発し、
私の心臓はその度止まっているのだ。
まさにハートブレイクショットならぬハートブレイクシャウトである。
ハートブレイクショットが伊達英二ならば
ハートブレイクシャウトはオカンである。オハマ=オカンである。
思わず伊達顔になるわたし
そして、このシャウトが部屋に響く時はオカンは足や手をしきりに動かしてみせることもあるのだ。
時に隆起と沈下を繰り返す大地か、はたまた寄せては返す波のようにうねうねと掛布団は動き、天に伸ばしたオカンの腕がタクトを振る指揮者が如く軽快にリズミカルに踊るる。
そんな光景を何度も見ている。そしていつもこう思うのだ
「皮肉なものだ…」
パーキンソン病も重くなってしまった今、普段といか現実ではあり得ない動きである。
病気などまるでなかったような正常な人の正常な動きなのだ。
ただ、それは夢の世界にいるときだけ起こる。
オカンが夢の世界にいるときのみ起こる、夢にまでみるような正常でよどみない動き。
実に皮肉なものだ。
とろけだしている脳ミソがそそくさと準備した答えをビールと共に
がぶがぶと鵜呑みしていた次の瞬間、
ガバッと掛布団の下、毛布がめくられた。
「…ん?」ちょっと脳ミソも手を止めた。
薄明るい寝室のベットの脇、何やら人影らしきものが見える。
オカンが座っている。
ベットに腰掛けている。
「ビビった」。正直ビビった。
ビビった以外の言葉は用意していない。脳ミソはすでにとろけてしまっている。
寝返りも自力ではうてない筈なのだオカンは。
そのオカンがむくりと体を起こし、ベットに腰掛けている。
手、足バタバタの比ではない。体を起こしているのだ。
とろけていない脳みそでも同じだったかもしれない。
ただただ唖然。
驚くしかない状況がそこにあった。
ー続くー
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