母とビーバップと本当の気持ち
ふへへへへへへ ふへへへへへへ。・・・
まさに今戦うレスラーの呼吸が
リビングにこだましております。
が、テレビではありません。
母です。
なんてことは無い。何か言っている母の声です。
病の母は身体の自由が効きません。要介護者です。
つま先から頭の中まで不自由で。
『てめえの顎はよく動くなあ・・・』
トオルとヒロシは柴田を狙ってボコスカタコ殴り。
柴田は血だるま。彼は、前歯にタバコを挟めるようになりましたとな。
・・・ビーバップ・ハイスクールの話です。 脱線しました。
彼は口がよく動きますが
母は動きません。薄く開いた口の形のまま、何か気持ちを発します。
『うううううう ううううう』『あわわわわわ あわわわわわわ』
文字起こし屋泣かせの響きで、最小ボリュームで。
(聞き取りやすい時もありますが、寝起きはどうも・・・・)
じわり、じわり、辛くなります。
ノイズではない命ある声が
傷だらけのCDのように繰り返されている今、
『静かにしてなさい』言いたい自分にも。
『静かにしてなさい』言い放つ父にも。
そして、(それ逆効果だよ。何か言いたい事があるんだからさ・・・)
いさめるでもなく、父の疲れも勝手に推し量り、
のみ込む自分にも。
本当はどんな気持ちでどんな言葉でどんな声色でどんな事を伝えたい?
母よ。
そういや昔、
ビーバップの映画連れて行ってもらいました。母に。
ヤンキー青春映画に熱中する我が子を
隣の席で、どんな気持ちで?
母よ? ・・・ねぇ母よ??