希望は売り切れですか?

アラフォーでアダルトチルドレンで独身でおまけに失業に介護・・・。今日もつぶやく『店員さん・・希望は売り切れですか?』

打ちっぱなしに行ってきた ~完結編~

目線を下にやると止まったボール。

こいつにベクトルを与えてやる。なるべく大きなちからで。

するとこいつはぶっ飛んで瞬く間に見えなくなる。

 

よし。よし。大体のイメージは出来た。

イメージを具現化するために素振りなんかしてみる。

手にはアイアンとおぼしきクラブを握って。

 

さあ。とボールにそっとクラブを添わすと、

ん、あっれ??

アイアンのフェースが背を向いているではありませんか?!

ーやっちまった・・。これ左用じゃん・・。恥ずっ

 

こてこての右利きなのに左利きのクラブ握って

素振りしている奴がいたんですよ。

ーやっちまったな~。クールポコだったら何て言うでしょう?

男は黙って打て!でしょうか・・・黙って杵!でしょうか・・・。

 

           f:id:ohama44:20211009010917j:plain

 

などど、恥ずかしさを誤魔化しつつ、

何もなかったようクラブを取り替えます。アイアンらしきものからドライバーへ。

そして確認。大丈夫、今度はしっかり右利き用。

 

 

華麗なスタートダッシュのはずが、いきなりのつまづき転倒。

いつもそう。俺の人生こんなもの。

 

 

ドライバーで取り返すぞ。と意気込みは十分ですが、

不安も十分です。なにせドライバー握るのは初めて。

初心者にはアイアンだね。と正解か否かもわからない先輩の言葉で

アイアンしか使ったことがなかったのです。

 

が、今更、アイアン拝借しに戻るに戻れません。

打席には財布やらスマホやらでしっかり陣取ってしまっていて

動けません。

 

いつもそう。しがらみだらけの俺の人生。

 

と、めんどくさがり屋は片付けを放棄し、

今度はドライバーに望みを託すとします。

 

スタンスはこのくらい?握り方はこうって、膝は・・肩は・・。

と正解はよく分からんケド、それっぽい形になるようにやってみます。

 

ギギギギギ、ギギギ、ギギギギ

 

固い。油切れたロボットかの如く固い。

もっと脱力だよ。もっと力抜いて。自分に言い聞かせるも

 

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ

 

やっぱり固い。

 

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・ドふっ!

 

ピュンと跳ねて、ころころ~っと転がるボール。

ええ。ダフった。

 

よし。ダフった。恥ずかしいがダフったぞ。

ダフったもののボールは転がった。ベクトルは生じた。

残球もまだまだある。

そのうち思い出すと。

 

が、甘かった。

 

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・ドふっ!ー  

ころころ~っ。

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・ドふっ!ー 

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・ドふっ!ー 

ころころ~っ。

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・スカっ!ー 

微動だにしないボール。空を切るクラブ。

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・ドふっ!ー 

申し訳程度に転がるボール。

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・スカっ!ー 

ーギギギギギ、ギギギ、ギギギギ・・・・・・ドふっ!ー 

スカっ!ドふっ!スカっ!ドふっ!・・・・・。

 

おっかしいぞ?! こんなに難かった?! 俺こんな下手だった?!

変な汗をかく。無駄に力が入っているから余計に。

ちょっと冷静に、と足元を見れば

何やら無数の黒いゴミ?が散らばっている。

ん?なんだ?と思うと同時、嫌な予感、

左手を見る。

 

 

f:id:ohama44:20211009132320j:plain

 

あっちゃ~・・・。

 

左手に装着した10数年以上前のゴルフ手袋の人工皮革が

ぼろぼろと剥がれ落ちている。化石のような手袋では無くて、まさに化石そのものだった。

クラブを振ればダフリに空振り、手を見ればそこには化石。

 

完全にやってしまった。完全に場違いなところに来てしまった。

初心者ならまだしも、化石を装備した初心者じゃ訳が分からん。理解不能だし単なる不審者だ。

日本広しと言えど、こうやってゴミ箱の前にしゃがりこんで、ボロボロ、ボロボロと手袋の皮剥きしているゴルファーが居ようか。

 

情けないやら、恥ずかしいやらで帰りたくなるが、まだ100球以上残っている。

ふと、インナー竹原を思い出す。“…100球で勝負じゃ” 言っていた。

そうなのだ。まだ勝負は始まってすらいないのだ。

 

 

                                      f:id:ohama44:20211009132414j:plain

 

 

 

再度打席につくと、いくぶん気が楽になっている。

化石を装備した初心者がいる。もう周りの理解はそうなっているはずだ。

ダフろうが空振ろうが、気にしたことではない。

だってド素人なんだから。

黒い物体で散らかっていたって平気。

だって化石装着してるんですから。

 

だが、体はそうは行かない。

依然ロボットのようにーギギギギギーと音をたてる。そして、それに従うように

ボールも軌道を上げない。

ドライバーでもパターでも一緒じゃね?ってぐらい飛ばない。

スカっとしない。

 

そしてありえない事が起こる。

 

ボールが後ろに飛んだ

 

 

f:id:ohama44:20211009170406j:plain

 

完全に力学を無視したことが起こったのだ。

ええええ。なんでそうなるの・・。と唖然としたが前方へのベクトルを加えようと

振り下ろした力は打席間を仕切るネットにぶつかり、後ろに飛んで行った。そして今

コーン、コン、コン、と後ろで力なく弾んでいる。

恥! 恥! 恥! 恥っずっ! さすがにこれは恥ずかしい!

と同時に 危! 危! 危! 誰にも当たらなくて良かった~ε-(´∀`*)ホッ。である。

そそくさとボールを拾いに行くついでに帰ってしまいたい。

が、今帰ってまた次来るのだろうか?とも考える。

 

なにせ手袋は化石ゆえ、ゴミ箱行きは決定。

ここにこうしていることの原因もこの手袋を偶然発掘したからだ。

その手袋を捨て新たな手袋を買う?…買わないな。

じゃ残球どうすんの?ドブに捨てる?…勿体ないなそれは。

 

貧乏根性強し、恥に勝利し打席に戻る。

化石を装備した初心者は危ない球を打つ。周囲の理解はこう変わっただろう。

危険人物となった今や長居はしてられない。

幸い体も心も疲れてきた、残球消化マシーンと化そう。と

次の瞬間 …ッパキューン…!

小気味いい音をたてボールが飛んで行った。

手応え。今日初めての手応え。

 

これだよ!これ、これ!!

化石が新品だった時に味わった手応え。10数年ぶりの手応え。

ようやく体が順応したのか、思い出したのかボールは高く飛んだ。

 

 

ジムのトレーナーは言った

“オハマさん、とにかく脱力ですよ。オハマさんは

パンチ打つぞ打つぞって、ぐっと力が入ってます。

パンチに力は不要ですよ。0の力でパンチを出して当たる瞬間に100%で”

 

競技こそ違えども、『力まない』ってのは重要かもしれません。

そして、それは生きることにも通じているかもしれません。

スタートダッシュ決めようと思えば、その時すでに力んでいるのかも知れないし、

自分はこう!と意固地になっていれば、周りはそれを邪魔するしがらみに、感じるのかも知れません。

 

最後の一球、力まないで、けれども、力を込めて。

…ッパキューン…!天高く飛んで行きます。

が、スライスです。

ゴルフの面白さはここかも。

ド素人の感想です。

 

帰路の最中、先輩を思い出す。

どうしてるかな?元気かな?

そして、アイアン推しの本当のところを聞きたいな。

 

 

 

                                  おわり