希望は売り切れですか?

アラフォーでアダルトチルドレンで独身でおまけに失業に介護・・・。今日もつぶやく『店員さん・・希望は売り切れですか?』

打ちっぱなしに行ってきた ~選択編~

ぐるり周囲を見廻す。

良く溶け込むように。浮かないように。

 

ひょんな事から打ちっぱなしに来てしまった。人生2度目。

1度目は当時何才だったかも忘れるほど昔になってしまった。しかしゴルフをカジリ始めた先輩が指導らしき、屁理屈らしき事を丁寧に、曖昧に、教えてくれた。

言わば同じ穴のムジナが2匹だったわけだ。

 

しかし今日は違う。ひとりだ。

ゴルフ練習場+ひとり+ド素人=心細い

更には人が多い。

ムジナ2匹は自由に動き回った。自然界に解き放たれたように。

それが今では間違って人里に下りて来てしまった、年老いたタヌキ。

 

開いてる打席、開いてる打席と…。心で呟きながら探す。が、声が漏れてるのではないかと思うほど、目が合う。

タヌキなのに化けれていない。

そりゃそうだ。

素手ゴルフクラブを裸のまま持ち歩いている。当たり前だ。

ここにいる人々は皆マイバッグにマイクラブだ。

 

バレちった。

溶け込む前にプカプカ浮いた。

 

だよね〜。そうなるよね〜。

こういう目線は分かりきった事だったので何とも感じない、

I'm  OK。 重要なのは打席に入ってからだ。

 

問題はそこだ。フロア全体を見渡しても

人、空き、空き、人、人、人、人、空き、空き、人、人…と、空き打席はあるものの

2つしか連続していない。つまりプレシャーを間近で顔面に感じるか、後頭部に感じるか、どちらかしかない。

 

しばしば出くわすシチュエーション。

右の人と隣合わせるか、左の人と隣合わせるか。

先に定位置を確保し、選ばれる側だったら、多少は気も楽だ。被害者意識でいられる。 だが、選択する側はそうはならない。

自ら選んだ責任に付き合わなければならない。苦渋であり苦痛だ。

選択はいつも自由な顔して不自由を連れてくる。

 

こんな場所で出くわしてしまった。一気に気が重くなる。

グズグズと悩んだ末、出来るだけ穏やかそうな紳士の直ぐ背後を選んだ。

顔面にプレッシャーも受けるし、紳士がふと、力んだ瞬間屁でもこけば、餌食になることは免れない。…が、代償に体の使い方、打ち方も観察できる。

なにせ俺はド素人なのに一人なのだ。

 

打席14番。

ささっと席につき、購入した1000円券を機械に差し込む。

残球143。1000円=100球ではなかった。帰ったらインナー竹原に教えるとしよう。

 

羽織っていた上着を脱ぎ、おもむろにポッケのゴルフ手袋を取り出し左手へ。

目の前には散らかった無数のボール。

それぞれがそれぞれの思いとやり方で打ちっぱなした無数のボール。

この瞬間にも小気味いい音と鮮やかな軌跡を描いていくボール。

その奥遥かに180ヤードの文字。

 

そして、ぬらーりと地中からせり上がったボール。

さあ14番、あなたの番です

 

ちょっ…待てよ! 今、クラブの持ち方ググってるから。

 

 

                                 つづく